編集後記

2016年5月号 連載 [某月風紋]
by 宮

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いつまで頬被り? 廣瀬直己社長(撮影/本誌 宮嶋巌)

廃炉作業が進む福島第一原子力発電所

4月11日、新潟県が東電に鉄槌を振り下ろした。県の有識者「技術委員会」が「メルトダウンの公表について、これまで事実に反する説明を繰り返したことに関し、以下の70事項を明らかにせよ」と要請文を送りつけた。かくも苛烈な「求釈明」を見たことがない。

▽「官邸から炉心溶融とメルトダウンは絶対に使うな」と、広報担当者が武藤副社長(当時原子力立地本部長)に耳打ちしたのは、誰から指示を受けたのか▽技術委員会に「国から指示はなかった」と説明することについて、役員のどこまで了解を得ていたのか▽なぜ、5年も経って社内マニュアルが発見されたのか。メルトダウンの定義を認識していた人たちが、この5年間、なぜ言い出せなかったのか。誰が情報を止めていたのか▽5年間隠蔽していた可能性が高いのに、なぜ十分な調査もしない段階で「5年間気がつかなかった」と公表したのか▽なぜ、原災法15条に基づく「炉心溶融」通報が行われなかったのか。法令違反ではないか▽東電は事故後の真摯な反省に基づいて体質改善に取り組んでいるというが、安全文化が浸透しているとは思えない、などと続く。

新潟県が業を煮やすのも当然だ。「本来、社内マニュアルの発見者である姉川常務(原子力立地本部長)が直ちに会見を開き、事の仔細を説明すべきだったのに、『国会が開かれている。発表はスローダウン』と、廣瀬社長からストップがかかった」(幹部)。その3週間後、廣瀬氏は76歳の元仙台高裁長官ら3人の弁護士による「検証委員会」なるものを作ったが、原子力の有識者でもないご老人に何を調べさせるのか。時間稼ぎの「隠れ蓑」に過ぎない。マニュアル「発見」から50日が経った今も廣瀬氏は頬被りを決め込んでいる。指名委員会等設置会社となった東電の社外取締役は、こんな保身を許すのか。

   

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