編集後記

2016年4月号 連載
by 宮

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「午後2時46分」に合わせて黙祷を捧げる東電社員(3月11日東電本店、撮影/本誌 宮嶋巌)

黙祷の後、1F免震重要棟で行われた広瀬社長の訓示を映し出す東電本店のスクリーン

1F事故発生時、内閣官房長官として広報の重責を担った枝野幸男氏

東電が第三者に委嘱した炉心溶融に関する通報・連絡に関する検証委員会の初会合。挨拶する田中康久委員長(元仙台高裁長官、3月17日)

東電が頑として認めようとしなかった炉心溶融(メルトダウン)──。その判定基準が記された社内マニュアルが見つかり、津波から3日後には「メルト判定」が可能だったと、東電が言い出した。とんだ茶番である。マニュアルの存否にかかわらず、東電が官邸や監督官庁に炉心溶融を通報し、それが直ちに公表されることなどあり得なかった。

新潟県の泉田知事が「炉心溶融を隠蔽した背景や、誰の指示だったのか、真実を明らかにして欲しい」と、追及するのは当然だ。県の技術委員会が1F事故の独自検証に乗り出したのは12年7月。翌年9月から六つの課題別チームが聴き取り調査を開始した。14年2月には、東電から〈官邸・監督官庁への調整および事前了解の必要があり、「炉心溶融」「メルトダウン」という用語を使用してはいけないという一種の「空気」のようなものが醸成され、圧力と感じていた〉との言質を取った。さらに東電の提出資料には「官邸からの圧力」と題して〈3月13日14時頃、清水社長官邸訪問。菅首相、枝野官房長官と個別に面会。社長は官邸から強い注意を受け、社内に「広報はまず官邸に伺いを立て、許しが出るまでは絶対に出すな」と指示した〉と明記されていた。かかる指示によって、マニュアルは闇に葬られたのだ。大手メディアは「政府・東電が炉心溶融を隠し、事故を小さく見せようとした」と論ずるが、的外れだ。官邸は炉心溶融がもたらす地球の破滅・チャイナシンドローム的風説の流布を恐れて「言葉狩り」をしたに過ぎない。過酷事故(シビアアクシデント)の真の恐ろしさは情報をコントロールしなければ社会的パニックが生じ、事故収束が不可能になることだ。情報を隠さなければ成り立たないモンスター装置の是非が問われている。

2万人ものご愛読に支えられ、本誌も「満10歳」! 「根性のある雑誌」を作り続けます。










   

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