5・17大阪都住民投票 負けられぬ「総力戦」

江田 憲司 氏
維新の党代表

2015年5月号 POLITICS [インタビュー]
聞き手/本誌編集人 宮嶋巌

  • はてなブックマークに追加
江田 憲司

江田 憲司(えだ けんじ)

維新の党代表

1956年岡山市出身。東大法卒(司法試験合格)。旧通商産業省へ。内閣総理大臣首席秘書官を経て、2000年衆院初当選(神奈川8区、当選5回)。09年みんなの党を結成。13年結いの党を結成。昨年9月に橋下徹大阪市長が率いる日本維新の会と合流、維新の党を結成し、12月より現職。

写真/平尾秀明

――「大阪都構想」の是非を問う、住民投票が5月17日に行われます。

江田 統一地方選が終わった翌日(4月27日)から、全ての国会議員(51人)とその秘書を大阪に投入し、私も街頭に立ち、あらん限りの応援をします。絶対に負けられない総力戦です。

――地元の世論調査で「賛否」が拮抗する一方、過半数の有権者が「説明不足」と不満を漏らしています。

江田 今年に入って、橋下さん(市長)と松井さん(府知事)による「タウンミーティング」は100回を超えました。橋下さんは都構想特設サイトCHANGE OSAKA! 5・17を立ち上げ、動画でわかりやすく解説しています。投票日に近づくほど「二重行政を解消し、大阪は豊かになる。」という切実な訴えが、有権者に広がるはずです。

ロジカル・コンビでとことん議論

――地元大阪の自民、公明、民主、共産は問題が多いと反対しています。

江田 都構想が実現したら大阪市は廃止され、市議会もなくなる。既得権者の市議らが反対するのは当然です。住民投票の意義は、知事と市長が並び立つ弊害、「二重行政」による税金のムダ遣いを放置してよいのか、大阪市の有権者215万人の選択に委ねることにあるのです。

大阪市の人口は268万人。橋下さんは、1人の市長では規模が大きすぎて、地域の実情に合わせた住民サービスの提供は無理だと言います。人口263万人の京都府は26市町村、人口285万人の広島県は23市町に分かれており、これらに比べて大阪市民の声が市長の耳に届かないのは明らかです。都構想では大阪市を廃止した後、人口50万程度の五つの区に再編され、それぞれ公選による区長と議会を置きます。中核市と同規模の身近な区役所が、身の回りの行政サービスを提供するメリット、その利便性は大きい。

――1956年に政令指定都市制度を創設以来、初の政令市廃止になります。

江田 地方の発意による地域主権改革の実践であり、将来の「廃県置州」を見据えた突破口になります。橋下さんは都構想に政治生命をかけると仰っているが、ここで敗退するわけにはいきません。

――紆余曲折を経て、橋下氏が率いる日本維新の会と合流しましたね。

江田 橋下さんと江田は仲が悪い、意見が合わないというのはタメにする分断工作です。この間、何度も食事をし、何十時間も議論してきたから、彼のことは一番よくわかります。私は「理屈屋」と揶揄されるが、彼も弁護士だから理屈で勝つタイプ。お互いロジカルだからとことん議論します。サシで会えば少なくとも3時間、延々と6時間も議論したことがあります。ロジカル・コンビだから、後に感情的なしこりは残りません(笑)。橋下さんとの出会いは2001年の秋。ともに『サンデー・ジャポン』のレギュラーになり、約2年間楽屋でも一緒でした。当時の印象は礼儀正しい好青年というだけ。その比類なき弁舌が開花したのは『行列のできる法律相談所』で人気を博した頃じゃないですか。

――橋下さんは誤解を招くような発言や不穏当な言説が目立ちます。

江田 彼の弁説は当代随一だと思いますが、「両刃の剣」の面があります。目の覚めるようなドライバーを飛ばしたと思ったら、とんでもないOBを打つ。かと言って意図して不穏当な発言をしているのかといえば、そうではない。普通の政治家は、世の中との摩擦を恐れ慎重ですが、橋下さんはパッと思いついたことを口に出してしまう。実に率直というか、無防備なんです。

――あの石原慎太郎さんも、橋下さんの大胆不敵な弁舌にゾッコンでした。

江田 橋下さんには国政のしがらみがなく、損得で動かない強さがある。大阪都を軌道に乗せて、国政に出て来てほしい。ベストは次の総選挙だと思います。とはいえ、中央政官界は、大阪府・市と次元が異なり、手ごわく、強大です。橋下さんといえども、これまでの流儀では通用しない場面が出てくるでしょう。永田町と霞が関にどっぷり浸かり、そのしがらみから脱した私の経験やノウハウが、橋下さんの役に立つと思います。

民主党よ、もっとしっかりせよ!

――世論調査によれば、自民党と維新の党の支持層の6割が、共に憲法改正を支持しています。一方、民主党支持層の改憲支持はわずか3割です。

江田 憲法改正による統治機構改革を唱える我が党の支持層に改憲支持が多いのは当然です。とはいえ、9条改正ありきの自民党の自主憲法制定とは一線を画します。学生時代に憲法学の権威、芦部信喜先生から「自衛隊は違憲が通説」と習いました。国民から広く認められている自衛隊が、憲法の条文から読めないのは、何とも気の毒です。とはいえ、国民の間に様々な議論がある9条改正には、国民的な論議とコンセンサスが不可欠です。9条改正に慎重なスタンスは、橋下さんとも一致しています。

――国会運営で自民党との共闘が目立ちます。「維新の党は安倍自民党の補完勢力」と皮肉る向きもあります。

江田 個別の法案対応は是々非々であり、反対のための反対はしません。自民党の「一強多弱」の政治状況の中で、野党に求められる使命は、圧倒的な数を誇る政権与党に擦り寄ることではありません。政治理念や基本政策の一致を前提に野党勢力を結集して、自民党に対抗しうる、政権交代可能な政党を作ることです。 自民党がすべて悪いとは言いませんが、互いに競争し切磋琢磨できる政党があって初めて国会に緊張感が生まれ、国民を向いた政治が実現できるのです。我々野党議員が危機意識を持って既得権益を打破し、しがらみだらけの自民党には決してできない、規制改革をはじめとした成長戦略や地域主権改革で「この国のかたち」を変えていかなければ、日本の将来はありません。橋下さんが民主党より安倍自民党を支持すると言ったのは、いつまでたっても基本政策が定まらず、不甲斐ない野党第一党に業を煮やしたから。民主党にはもっとしっかりしてほしいですね。

   

  • はてなブックマークに追加