編集後記

2015年4月号 連載
by 宮

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田中俊一委員長の訓示風景(3月11日、原子力規制委員会)

時間が止まった双葉町(1月24日、撮影/本誌 宮嶋巌)

原発5キロ圏を歩く(浪江町・請戸)

佐々木美穂子さん

あの日から1461日目――。真っ黒な東京新聞の1面にまいった。高度9千mから日の沈んだ浜通りを写す。「闇に包まれた町の中、照明に浮かび上がる1F。その横を国道6号を走る車のライトが南へ続く……大熊町や双葉町など避難指示区域は、事故から4年たっても、苦しい避難生活を強いられている。明かりの消えた地域の様子に、原発事故は普通の暮らしを奪ったという事実をあらためて実感した」と書く。さらに「きょうの新聞は読み終えた後、1面と最終面を見開いてみてください。2枚の写真を対照させると、原発事故がもたらした過酷な現実と未来が浮かび上がってきます」(編集日誌)。そう書かずにいられないのが記者魂である。

正午過ぎ、原子力規制委の田中委員長の訓示を聞く。福島が古里の委員長は、全村避難をしている飯舘村の菅野村長から、手紙とともに届いた、役場の職員向けの「年頭所感」に胸を打たれ、その一部を紹介する。

「もう100点の答えはない。ベストの答えはありえない。したがって、より高いベターの答えに向かって皆で努力しあい、知恵を出し合い、時には我慢しあって復興に向けていくしかない。そこにはベストでない決断をしたり、責任を負ったりしなければならないという使命というものがあるのだろうと思います」(全文は飯舘村のHPで読める)。そして、委員長は「事故から4年がたち、一部では事故の教訓を忘れつつある風潮もあるが、規制の責任を担う者は、絶対に福島の教訓を風化させてはならない」と戒めた。

本誌も今号で満9歳(通巻108号)を迎えます。表紙絵は次号より、パリの名門「エコール・デ・ボザール」留学が決まった佐々木美穂子さんに代わって、同じく東京芸大博士課程(日本画)で学ぶ澁澤星さんが担当します。ちょっとアンニュイな「星世界」をお楽しみに!

   

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