「父殺し」に逸る半島と列島

2014年8月号 連載 [いまここにある毒]

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ゴン! と鈍い音。蜷川幸雄演出『海辺のカフカ』のカーテンコールで、主演の宮沢りえがハイヒールの足を滑らせ、舞台でスッテンコロリ。額を押さえていたから、頭を打ったのか。村上春樹の原作は、メルヘンめいた甘い「父殺し」のドラマだった。世界を包む霧雨のフィナーレに、転倒の音だけがリアルに耳に残った。拉致再調査のため特別委員会を設けた北朝鮮は、三代目金正恩が「父否定」を進めているのだろうか。父の側近、張成沢を粛清したのに続き、先代の「負の遺産」の拉致問題を片付け、日本の援助で孤立に風穴を開けたいのだろう。南の韓国では、セウォル号事故以来すっかり株を下げた朴槿恵大統領が、習近平訪韓を機に中国頼みで政権立て直しを図る。歴史問題での強硬な「反日」の旗は、親日家だった父朴正熙を躍起になって否定しているかのようだ。宿願の靖国参拝と集団的自衛権の行使容認のあ ………

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