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懲りないグリーの悪辣「パッケージガチャ」

コンプガチャの後継機能は更に「タチ悪」。パクリ体質も相変わらず健在で、業界の首を絞める盟主に未来はあるか。

2012年11月号

コスプレ美女が並ぶグリーのブース(東京ゲームショウ)

Jiji Press

いやはや、懲りないというか、あざといというか……。集金マシンと化したコンプガチャの全面廃止で窮地に追い込まれたグリーが、あの手この手で収益回復を狙っている。コンプガチャ廃止、業界の自主規制ルール策定で一段落つき、マスコミはすっかり興味と関心を失ったようだが、本誌は見逃さない。その後のグリーを検証していこう。

まず、コンプガチャがどう変節したか。法令に従って「絵合わせ」による景品提供をやめ、自主規制に従って間接的な確率表示を始めた。だが、射幸心を煽るガチャはいまだに健在だ。ネット上には「コンプガチャより悪質」とのユーザーの声もある。一体どういうことか。

コンプガチャを導入した草分けで、一連の問題の契機を作ったグリーの「探検ドリランド」。ガチャのページを見ると、相変わらず最強のレアカード「SSレア」が強調されている。これは、1回315円、あるいは11回3300円の課金ガチャでしか得ることができない。

問題はどう得るか。答えは、引き続ければ最終的には必ず出る、だ。グリーが7月以降、コンプガチャの代わりに導入した「パッケージガチャ」なるもので、ドリランドの場合は課金ガチャには330枚が入っている。そのうち事実上の当たりくじであるSSレアは各種1枚ずつ。確率にして330分の1と、射幸心の高いパチンコ並みだ。

ただし、パチンコとは違い、毎回330分の1の抽選を行っているわけではない。一度引いたカードは次回のガチャでは除外されるため、最悪で330回引けば必ず出る。パチスロで言う「天井」機能に近いだろう。一見良心的に映るが、そうでもないところがミソだ。コンプガチャは毎回抽選でカードを引くため、天井がなかった。故に諦めるユーザーもいただろう。しかしパッケージガチャは、約10万4000円投資すれば必ず目当てのSSレアを手に入れることができる。つまり、諦める者が少なくなり、突っ込む者が多くなる仕組みなのだ。

さらにゲーム内では最強のSSレア複数枚を所持することが定石となっている。330枚のうち、1種類のSSレアは1枚のみしか入っていないため、2枚、3枚と揃えるには、何度もパッケージガチャに挑戦しなければならない。最初の挑戦で、運良く10回目に引き当てたとしても、次の挑戦では300回目になることもある。パチンコで初当たりを早く引いた客ほど、その後に突っ込んでしまう心理状態に陥りやすいのと同じ仕組みなのだ。これがグリーの強気の根拠である。

画餅の「健全化」

4~6月期、グリーの売上高は前四半期比で13%減、営業利益は23%減と落ち込んだ。今年6月から、コンプガチャを自主規制したことが如実に響いた証拠だ。ところがグリーは2013年6月期の売上高見通しを、今年度比で25%前後増としている。表向きは、国内の落ち込みを海外での成長で補うとしているが、ある国内証券のアナリストは「それほど海外の調子は良くない。コンプガチャの穴をパッケージガチャで埋める算段が付いたのでは」と見立てる。

消費者庁が問題にしたのは、射幸心ではなく、あくまで「景品表示法」の景品規制。射幸心は警察庁の管轄であり、風営法で規制されている。パチンコ業界などを取り締まる生活安全局保安課は、コンプガチャ騒動以降、ソーシャルゲーム業界の動向を注視しており、今後メスが入る可能性は十分にある。

グリーでは胸部を強調した女性のイラストが増え、「男子向き」「爆乳悪魔登場」といった宣伝文句で男性を釣る傾向も強まっており目も当てられない。これが、グリーが真剣に取り組んでいると主張する「健全化」なのか。甚だ疑問だ。

さらに正々堂々とパクリのようなことをやってのけるから、驚きである。

直らない「パクリ」体質

9月20日から開催された国内最大のゲーム見本市「東京ゲームショウ」。昨年に引き続き、今年もグリーは最大規模のブースを出展、コスプレ美女を取りそろえて話題をさらった。

昨年同様、基調講演には田中良和社長が登場。ここで田中社長は「スマホの性能はこの数年で劇的に成長する。その前提で何を作るかが次に求められている」「新しいゲーム性やストーリー性、ビジュアル面の革新を進めたい。普通のゲーム機とあまり変わらない体験ができるようになる」と語った。

家庭用ゲーム機陣営への本格的な宣戦布告。ブースに開発中の最新ゲームがあると聞いて見にいくと、目を疑うような代物が混じっていた。例えば「ともだち☆ドッグス」というゲームは、05年に任天堂が「ニンテンドーDS」向けに発売した大ヒット作「ニンテンドッグス」に瓜二つ。同ゲームに「他人とのバトル」「課金アイテムで強くなる」といったソーシャルゲームの2大要素を付加したような犬の育成ゲームだ。飼い犬をなでて喜ばせたり、フリスビーを投げて遊んだりするシーンは、見分けが付かないほど似ていた。

同様に、グリーが開発中で、田中社長が基調講演の中で紹介した「War Corps」というシューティングゲームは、操作性や画面イメージが「メタルギアソリッド タッチ」に酷似。同ゲームはコナミデジタルエンタテインメントが09年にiPhone向けに投入したものだ。

グリーは釣りゲームを模倣されたとして、ライバルの「モバゲー」を運営するディー・エヌ・エー(DeNA)を相手取り提訴している。1審はグリーが勝ったが、今年8月の知財高裁判決はDeNAの逆転勝訴。泥仕合は最高裁までもつれている。

一方、昨年のゲームショウで田中社長は「あるゲームデザインが流行った時には、そのゲームデザインをコアにしていろんなモチーフのものを作るということが求められている」と話し、ネット上では「パクリ宣言」と話題になった。そして今年のゲームショウでその実例を見せた。

健全化を図ると言いながら、射幸心の追求は続け、マネは許さないとしながら、人気ゲームと酷似した新作を自信満々に披露する。なりふり構わない矛盾した言動を見る限り、グリーも相当に追い込まれているのだろう。今年の基調講演で田中社長は、「世界をより良くする」という社是を口にしなかった。自覚があるのだろうか。