ジェムケリーが不動産進出のホラ吹き

2012年11月号 DEEP

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ジュエリー訪問販売の札付き業者に「退場命令」――。9月18日、消費者庁はジェムケリー(京都市下京区)の訪販事業に特定商取引法違反による半年の業務停止を命じた。ジェムケリーといえばベッキーや西野カナのCMでおなじみ。1992年に創業し、宝石販売で急成長を遂げ、ピーク時に年商100億円に迫った宝飾訪販大手である。

違反の中身は「勧誘目的の不明示」「再勧誘」「公衆の出入りしない場所での勧誘」「迷惑勧誘」。抽選のキャンペーンを携帯サイトなどで実施。応募者に電話をかけまくり、「プレゼントを取りに来て」などと巧妙に誘い出し、執拗な勧誘を行っていた。100万円もする宝石を勧められ「買えない」と断ると上司が現れて値下げや分割払いを示し、なおも断ると別の商品を勧めて長時間食い下がる、などの手口を繰り返し、10年前から年100件以上のトラブル相談が全国の消費生活センターに寄せられていた。

電話で来店を約束させる「アポイントメント商法」は訪販の一種。その手口となるトークマニュアルを作ったのは創業者の中野猛社長(50)だ。元社員は「天性のペテン師で、セールストークは天才的」と評する。中野流アポ商法の極意はデート商法だ。創業当初は独身寮に住む看護師の個人情報をあの手この手で集め、着物を売っていた。宝石に乗り換えた理由は「着物は親にばれるから」(元社員)。「『お客と寝てこい』と、販売員にハッパをかけていましたね。必ず異性の販売員をつけるスタイルは今も同じです」(元社員)

15坪の事務所から03年には自社ビルを竣工。急成長の原動力になったのが売れっ子を使ったCMだ。98年以降、米倉涼子、長谷川京子、押切もえ、倖田來未、河村隆一、益若つばさ、陣内智則などが広告塔を務め、全従業員の給与を上回るほどの広告宣伝費を投じた。04年から店舗展開を加速するが売上は低迷。14あった店舗は次々に閉鎖され現在は4店舗。08年3月期以降赤字続きで昨年度の年商は28億円と05年度の半分に落ちこんだ。

訪販が年商の8割を占めるジェムケリーにとって今回の処分は「死刑宣告」に等しく「処分を真摯に受け止めて反省する」と、訪販からの撤退を表明。しかし中野社長に反省の色はない。ブログで「テレアポセールスから完全撤退します」と宣言した翌週には「訪販とは全く関係の無い新規事業が既に始まっております」「好調な滑り出しを始めており、今期は久しぶりに、ここ5年間で最高の決算を迎えることが出来そうです。まさに怪我の功名とは、このことかも知れません」と、誇大妄想的な発言を繰り返している。

その新事業とは不動産だ。消費者庁の内部調査が入った夏以降、これまで個人情報を収集してきた子会社「Gスタイル」の事業目的に不動産を加え、従来の顧客に片っ端から営業攻勢をかけている。だが宅地建物取引主任者の法定数を満たせるはずもなく、8月に京都や東京、名古屋、福岡で一斉にスタッフ募集を開始。にわか仕立てのホームページには京都府知事免許の記載はあるが、2以上の都道府県で営業する際に必要な国土交通大臣の免許はない。中野社長は「大きく飛躍してビックリしていただけるビックイヤーに出来ることを誓います」とブログで語るが、ホラ吹きである。

   

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