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「新生」できぬ銀行の「出口」に金融庁苦慮

2012年3月号

新生銀行の当麻茂樹社長

Jiji Press

新生銀行が2010年末、日比谷公園前から日本橋室町野村ビルに引っ越して以来、ファンドに1千億円で売った旧本店ビル(21階建て、延べ床面積6万平方メートル)が1年以上空きビルになっていることが話題にはなっても、新生銀行は市場ですっかり忘れられた存在だ。

いまなお資本金5122億円、総資産は8兆6千億円もあり、従業員も1900人いるのだが、本誌が危惧したとおり、第一勧業銀行(現みずほ銀行)出身でいすゞ自動車を経た当麻茂樹社長が10年6月に就任してから、いまだに立ち直りのきっかけをつかめていない。

1月31日に発表した今期4~12月の累計決算は、目を覆わんばかりだった。連結経常利益は前年同期比34.7%減の279億円となり、通期の連結純利益見通しを当初の220億円から50億~90億円に下方修正した。前期比88~79%減である。

新生フィナンシャル、シンキ、アプラスといったノンバンクの「将来にわたる過払いリスクから決別するため」、利息返還損失引当金の引き当てを見直したのが理由としているが、コア業務にしても、預金がジリ貧なうえ、貸出資産も保有有価証券も減り続け、「底打ち感」と言い張っても稼げるタネがない。

当麻社長の使命である中期経営計画の達成――来年度(13年3月期)に連結純利益510億円、キャッシュベース連結純利益で600億円という目標は、引き当て見直しで「より確実なものになる」と言うが、これはいくら何でも強弁だろう。行内では「ほとんどムリ」という絶望感が広がっている。

さらに最近、個人のATMがフリーズしたり、法人のネットバンキングが止まったりと、システム障害を二度も起こした。八城政基前社長と近いインド人の元CIO(最高情報責任者)、ジェイ・デュイベディ氏が「600億円の基幹システムを60億円で構築した」(ダイヤモンド社刊の『ITに巨額投資はもう必要ない』)と自慢していたが、やはり欠陥が隠れていたのだ。

元CIOは在任中からシステムをブラックボックスにして、身内に発注していたとされ、八城更迭を機に辞めたはずだった。ところが、金融インフラ部門長の岡野道征専務執行役員兼CIOがシステムを牛耳り、元CIOの個人会社との契約はまだ切れていない模様だという。

業務改善計画が未達で、システム障害も多発となれば、金融庁はまた業務改善命令を出さざるを得ない。しかし、当麻社長を落下傘で送り込んだ負い目から、攻めあぐねている。

旧リップルウッド(現RHJインターナショナル)の中核で、今も筆頭株主のJ・クリストファー・フラワーズ氏が取締役に居座り、サンジーブ・グプタ専務執行役員(個人部門長)も残っている。利害相反すれすれの外国人役員に外様の当麻社長が手も足も出ないのは当然だろう。

資産も顧客も切って回復の芽を摘んだ八城時代の負の遺産に、あとは人員削減くらいしかなすすべがない。梯子を外された当麻社長が頼りにならないだけに、畑中龍太郎金融庁長官は「出口」探しに苦慮している。