オリンパス 「無謀M&A」巨額損失の怪
零細企業3社の買収に700億円も投じて減損処理。連結自己資本が吹っ飛びかねない菊川体制の仮面を剥ぐ。
2011年8月号 COVER STORY [企業スキャン]
オリンパスとGCの間で事業上のつながりができたのは、オリンパスが00年にITX株を取得したころである。ITXへはGC傘下のファンドを経由して出資し、前述した問題子会社3社の株式をオリンパスが最初に取得したのも、GCのファンドからだった。
オリンパスのM&Aでは、GCは仲介役であるとともに、ベンチャー企業の売り主であり、「ITXの別動隊」でもあり、一社で何役も務めているようだ。オリンパスがITXに出資を本格化させたころにITXの社長だった横尾昭信(現JALUX社長)とGCの横尾は、実の兄弟であるうえ、現在オリンパスの傘下には、GCの横尾が代表を務め、かつてはITXが子会社としていたラプランタ(野菜の人工栽培、長野県岡谷市)のようなベンチャー企業もある。オリンパスとGCにITXまで絡んで、資本関係と人間関係が複雑に入り組んでいるのだ。
しかし、GC関連のM&Aは失敗例が少なくない。アルティスなど問題の3社だけでなく、GCから買収したアイパワースポーツ(現オリンパスビジュアルコミュニケーションズ)も、債務超過に陥っていることが決算公告で確認済みだ。多くはまとめて新規事業を担当する子会社、オリンパスビジネスクリエイツ(OBC)の管理下に置かれており、いまやOBCはオリンパスの「パンドラの箱」と化している。
市場からは不信の目
6月17日に今期の業績見通しが発表されたのを受けて、証券各社のアナリストは一斉にリポートを発表。株価の先行きでは強気派と慎重派に分かれた。ある市場関係者は「慎重派はリポートに書いていないだけで、オリンパスの不明朗なM&Aには嫌気がさしている」と声を潜める。こうした市場の不信は深刻だ。オリンパスの貸借対照表上、純資産の項目に目をやると為替換算調整勘定の項目は1008億円のマイナスとなっており、同業でほぼ同じ資産規模のニコンなどと比べても格段に大きい。「まだ計上されていない損失があるのではないか」とアナリストが疑いの目を向けるのは、このあたりだ。

菊川会長が潔く経営責任を取っていない点も問題だろう。巨額の特別損失を計上した09年3月期には約1億8千万円の役員報酬を得ており、その後も1億5千万円を下回ってはいない。今年の株主総会で、取締役の報酬額を月額1億円以内、賞与の額を年額3億5千万円以内と改めたのは、悪いジョークだろう。
自己資本の回復に努めなければならない状況にありながら、前期の配当性向は109%。純利益を上回る配当を出すという大盤振る舞いだ。それでも機関投資家の中でオリンパス株を保有しているのは、株価指数との連動性を意識したパッシブ運用がほとんどだという。「菊川さんが残っている限り、オリンパス株は買いたくない」とまで言い切るファンドマネジャーさえいる。それどころか売り人気の高さでは屈指の銘柄となった。信用取引の売り残も極端な高水準になっている。
2月には英国人マイケル・ウッドフォード社長(51)の抜擢を発表。ヒラ取ですらなかった末席の外国人執行役員が、次期社長候補だった医療機器担当副社長らを25人もごぼう抜きにしたから話題になった。しかしこの社長交替劇は菊川体制の終焉を意味するものではない。菊川会長はCEO(最高経営責任者)の立場を手放してはいないからだ。
収益源の多角化とも純投資とも呼べないいかがわしいM&Aに、菊川会長がなぜこれほど淫したのかの解明は、東京地検特捜部の仕事かもしれない。一連のM&Aで社外に流出した巨額の資金の流れも闇に閉ざされている。オリンパスの「ココロとカラダ」がこれ以上病んでしまう前に、菊川会長には果たすべき説明責任と経営責任がある。(敬称略)
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