北京五輪の「蜜の罠」 数千人の女性工作員

2008年10月号 GLOBAL [グローバル・インサイド]

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北京五輪授賞式のアシスタントはテレビ映りのいい美人ばかりで、世界の視聴者のため息を誘った。表だけではない。裏のインテリジェンスでも、中国情報機関(CSIS)は数千人の美人工作員を北京に集め、五輪観戦中の外国人ビジネスマンや外交官補佐らに色仕掛けで迫る「蜜の罠(ハニートラップ)作戦」を行ったという。

CSISは推定1万人の工作員と補佐で構成され、北京市内に拠点が散在、組織全体を緊密に連結、管理しているが、誘惑を専門とする女性工作員は五輪前に北京・復興門站の拠点に集合、訓練を積んだ。彼女たちは「スージー・ウォン」(香港の娼婦を描いた60年代のハリウッド映画の主役名)というグループに属す。標的をホテルの部屋まで連れこみ、所持している文書や携帯電話を掠め取ることが使命だ。工作員が利用する“ハイリスク”ホテルには、後で脅迫に使うため盗撮可能な最新の監視カメラなどが取り付けてある。

中国のハニートラップは、今年に入りゴードン・ブラウン英首相の幹部補佐官が罠に落ちたことで明るみに出た。補佐官は北京のナイトクラブで中国人の女性工作員に誘惑され、宿泊先のホテルで一夜を過ごした。翌朝、目が覚めると女の姿はなく、首相官邸の機密の電話番号などを記録したブラックベリーのスマートフォンがなくなっていた。補佐官は懲戒処分され、記録されていた番号も変更を余儀なくされた。

英防諜機関MI5のエバンス長官は「標的になりやすいのは、IT産業や銀行など金融機関に所属するビジネスマン」と警告を発した。米国務省も訪中する米国人に「北京のホテルにはプライバシーがないものと思ったほうがよい」「電子メールや電話も盗聴されている」などと警告している。

   

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